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PLANET OF THE APES 猿の惑星

――もしかしてこれは21世紀の新しい日本人論か? 

旧5部作(68年~)と比べると猿のメイクやCGには物凄い進歩を感じる。役者さんたちの「猿」の演技にも脱帽。相手を威嚇する表情、奇声、ドラミング、飛んだり跳ねたり、四つ足で走ったり、よりリアルを追求。前作を知らない世代には、映像の面白さと急テンポな展開に、割と楽しめたのかもしれない。
 
原作者ピエール・ブールは、クワイ河マーチで有名な「戦場にかける橋」の原作者でもある。彼は第2次世界大戦中に日本軍に捕虜として捉えられ、そこで得た体験から2つの名作を残した。それが戦争とは何か、文明とは何かを問う2つの作品につながった。「猿」は日本人(イエローモンキー)の比喩だった?(この段落は受け売り)

でもここから旧作が単に当時高度成長期にあって世界に進出してきた日本を揶揄していると取るのは解釈が狭くなる。
猿の神話とか言い伝えとかタブーとか、果ては進化論や神学論争、第4、5作では人(猿)種差別、人(猿)民革命まで出てきて、人類が歩んできた歴史をそっくり猿に当てはめた文明論を展開した。そして第1作ラストの有名なシーンは、米ソ冷戦下での人類滅亡への強烈な警告となった。これは原作を超えるスケールだ。

ネタばれです---
今回の作品は、人は奴隷ではあるが話ができるという点で、猿との距離を縮めている。それだけ摩擦が大きくなると思いきや、猿にも人権擁護派がいて、旧作のような鋭い対立が見られない。あれから30年過ぎ、人種差別や動物虐待、宗教等の表現に自主規制をかけたのか?
猿が神の姿をまねて創られた唯一の存在という話も、森林の中を歩きながらさらりと流してしまう。(おいおい!) 
脱走劇という展開で緊張した場面が続く反面、30年前のこうした毒々しさは見事なまでに洗い流されている。

とは言え後半では、猿の古代文明の謎解きが出てきたり、神?の出現による新たな歴史の創造が出てきたりして、我ら人類の創造主は宇宙人だという俗説をそのまま映像化している。タイム・パラドックスもうまく仕込まれていて面白くないこともない。まぁ、これもありだろう。

そして大詰め、衝突すべくして衝突した両者。封印されていた猿の神話が敗戦の末に崩れてしまった後、果たして猿のアイデンティティはどうなるのか?
真実を代々隠し続けた将軍家を冷たくあしらうのは当然としても、人間たちとそう簡単に和解できるものなのか?

それにしても罪なのはこの主人公。この星の歴史のきっかけを最初に作り、その罪を償うように猿と人に共存の未来を与え、ある意味で「神」になったはずのこの主人公は、事件が終わると「じゃー!」とさっさと自分の星に帰ってしまうのは、あまりにも自分勝手だ! 彼を慕って立ち上がった人々や、英雄として敬意を抱く猿たちや、淡い恋心を寄せる雌猿を置いたまま。
結局彼にとってこの星での時間は悪夢であり、早く帰りたいのは当然なのか。なにしろ彼には帰る星、地球があったからね。(旧作では宇宙船も帰る星も無いから無理)
でもラストで悪夢は続く。少し無理があるけれど。 ウケ狙いなのか? 次回作の布石だったのか? 
原作に近いラストにするために主人公を帰したのだろうか? 

でもここまでかき混ぜておいて帰るのかなぁ? 結果的には猿と人とを和解させたけれど、この主人公はずっと自分のことばかり考えて行動しているのが大いに気に入らない。ここにいる人間たちを最初から救おうと思わなかったし、この国の歴史や未来とかの関心が全然ない。これだけ関わっておきながら・・・『タイムマシン』(同じ年に封切り)の主人公とは雲泥の差だ。
まるで海外旅行に行って買い物を済ませてさっさと帰るのと同じ? 

もしかしてこれは21世紀の新しい日本人論?


原作:ピエール・ブール 『戦場にかける橋』
監督:ティム・バートン  『バットマン』『シザーハンズ』『マーズ・アタック!』
出演:マーク・ウォールバーグ、ティム・ロス
(2001・アメリカ)

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