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写楽

――平成の役者が束になってかかってもかなわない、絢爛豪華な寛政文化の虚と実。

[物語]
真田扮する役者十郎兵衛(トンボ)は、舞台の上で縦横無尽にトンボを切る立ち回りで大人気だったが、ある日舞台上での事故で片足の自由を失い、職を失った。
彼は絵を描くのが好きだったことで、裏方の大道具の仕事にありついたが、昔の役者仲間には無視される始末。
一方、浮世絵の版元蔦屋重三郎(堺)は、お抱えの天才絵師歌麿(佐野)に逃げられ、彼を見返すために新しい絵師をさがし回る。そしてトンボの筆遣いに見初め、役者絵を描かないかと誘う。絵は当たり、一躍大人気となるのだが・・・

[見所]  
「写楽は誰か」、よく歴史ミステリーとして出てくるが、フランキー堺自身が生涯暖め続けたライフワークでもあったとのこと。まさに「孵卵器ー堺」だ!

この映画は謎解きの面白さ以上に、当時の歌舞伎小屋や、浮世絵師たち、遊郭の様子、お上の改革などが生き生きと描かれている。

片岡鶴太郎、竹中直人と「濃いー役者」ばかり集めているのに映画が重くならない。むしろ絢爛豪華な寛政文化を支えた多くの個性派芸術家たちを演じるには、まだまだ力量不足かもしれない。 これだけ役者が束になっても、名前負けしてしまうのだ。
(ちなみに新藤兼人監督『北斎漫画』は、緒方拳主演に、西田敏行、宍戸錠がいて、フランキー堺も出ていた)
 
[感想]
謎の写楽が、こうした「濃いー役者」ではない真田広之なのが、妙にリアルである。しかし幼名を何と言ったか、どうして役者になったのか、映画ではわからない。父の顔を知らず、母を幼い時に亡くしたようだと後からわかるのだが、そこから人気役者にどうたどり着いたのか、よくわからない。

映画は、ようやく手にした栄光の花道から転がり落ちて行く、運命のその日から始まる。
人気役者、齋藤十郎兵衛という名前も失った。旅芸人(岩下志麻)から名前を聞かれるが、黙っていたら、「舞台でトンボを切るからトンボ 」という名を付けられる。もうトンボを切れない身体なのに何とも皮肉な名前である。

トンボがかつての役者仲間から無視されて、屈折していく心情、すごくわかる気がする。
好きな絵がなかったら、もっともっと落ちていったんだろう。
旅芸人や蔦屋から仲間にならないかと誘われても、「しゃらくさい!」と最初は一蹴してしまう。
それで今度は、「江戸を意味する東洲と、しゃらくさいを付けて、東洲斎写楽」になってしまう。
私には絵はよくわからないが、彼の役者絵が妙に似ているのに、醜くて嫌らしくしてしまうのは、世の中を斜に構えて見ているからだと思う。おいらん(葉月)との出会いが、わずかながらトンボの心を癒すことになる。

天才絵師歌麿(佐野)は、囲っていたおいらんの裏切りと、写楽の絵に対する嫉妬で逆上し、権力を振り回して二人を無理矢理に吉原から抜け出るように仕向ける。これは掟破りで、すぐにつかまり、トンボは半殺しの目に合い、女は女郎屋に売り飛ばされる。こうして二人は引き裂かれて、共に抜け殻のようになってしまう。歌麿 も思い通りに復讐できたが、彼女に与えた選択が自分を捨てて出ていったことに大泣きする。

写楽は確かに才能と運はあったのだろう。役者としても絵師としても成功した。でもいつも隅っこにいるだけで、存在感が希薄すぎる。名前だって随分いい加減に決められてしまうし、駆け落ちだって人に強要されて否応なくする。これを「濃いー役者」ではない真田広之が演じている。そこが妙に等身大でリアルなために、他の「濃いー役者」たちが演じる絵師が、全部嘘っぽく見えてしまうのかもしれない。

唯一実在感があるのは、フランキー演じる蔦屋だけである。お上に楯突き、歌麿を見返そうと躍起になり、そして人生を全うする。その生き様は、 フランキー自身なのであろう。

原作:皆川博子
監督:篠田正浩
出演:真田広之、フランキー堺、岩下志麻、佐野史郎、葉月里緒菜
(1995・日本)

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