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12モンキーズ

――人類が滅亡すると信じる男が異常なのか、平気でいられる我々こそが異常なのか?

監督は当然ヒッチコックの崇拝者。映画館の場面ではヒッチコック・オールナイトで《めまい》《鳥》が上映されていたし、あちこちでこのシーンはあの映画のマネかな?と思った。
何よりも《白い恐怖》の女性精神科医と患者のコンビという点と同じで、この映画は患者を治療していく過程で 、話が思わぬ方向に展開していく恐怖を描いている。だったら《12モンキーズ》も同じような展開にし、未来から来たという話はミステリのように後からわかってくることにしたらどうかと思う。つまりこんな感じはどうだろうか?

――以下思いっきりネタばれ

1990年、女性精神科医キャサリン(マデリーン)は5人の警官を相手に大暴れをした挙動不審の男コール(ブルース)を診ることになった。彼が幻覚を訴えながら話したのは、96年に細菌が世界を覆って人類の大半が死滅してしまう話で、自分はその秘密を握る12モンキーズを探しに未来から派遣されて来たのだと言う。

コールは当然精神障害者と見なされて施設に入れられるが、そこで患者のジェフリー(ブラッド)と出会う。ジェフリーは12モンキーズの話を面白がって聞いていた。やがて彼の手を借りてコールは脱走する。大捕り物の末に一度はつかまるが、いつの間に彼の姿は跡形もなく消えてしまった。

96年キャサリンは講演会の帰り、突然現れたコールにフィラデルフィアまで連れて行けと無理やり車に乗せられる。
コールはまた幻覚を訴えながら言う、人類破滅の危機が迫っていて、そこに行けば秘密を解く鍵があるはずだと。
必死にキャサリンに協力を求めるが、彼女は妄想に過ぎないと答える。
しかしコールが戦線にタイムスリップして被弾した話を聞き、彼女は著書の第二次世界大戦当時の写真にコールが写っているのを発見して、ぞっとする。ありえない!でもなぜ? 彼は本当に未来から来たのだろうか?

やがて街に着き、コールが見つけたのは壁に赤いペンキで描かれた12モンキーズのマーク。浮かび上がる動物愛護団体。そこにはあのジェフリーの名前が、そして彼の父親はなんと細菌研究所の所長だったのだった!果たして人類絶滅はコールの単なる妄想なのか?それとも本当なのか・・・・

タイム・パラドックス物として「過去は変えられない」という設定は今となっては逆に新鮮に感じる。最近の映画なら過去を変えて人類を救うはずなのに、あくまでもこのミッションは、細菌のサンプルを採集して来て現代(20XX年)を救うことに留まる。その低姿勢とは裏腹に充分にアイロニーが利いている。過去は変えられないからこそ、過去に行くことで歴史に加わってしまう。そう、《戦国自衛隊》のページでも書いた。でも最後に機内で犯人に接触した時に一度だけ人類を救うチャンスがあったはず?それでも過去は変えられないのかなぁ?

留守番電話を使って調査の報告を逐一未来にするアイデアは面白い。でも未来側ではいっぺんに再生できないのか? 普通は留守電ってまとめて聞くでしょう、そしたらコールを過去に送ったことで、 報告はいっぺんに聞けて謎もいっぺんに解けるのでは? 未来人は留守電を一つ再生して作戦を考え、また後で次の留守電を聞いている。過去と未来が同時進行しているみたいで、おかしい。

この映画の一番の見所はラスト! コールが幼い頃から繰り返し見る夢の正体が明かされる。美しい女性のあの不思議な笑顔は何なのか? 夢のシーンは何度か出てくるたびにベールが脱がされて行き、最後にやっとパズルの一片が埋まる。これは感動モノ。ここが一番書きたいのだが、今回は何も書かない。ぜひ映画を見てほしい。
元になった短編作品《ラ・ジュテ》(1962、フランス)も見たが、そのアイデアをそのまま使っている。

ブルース・ウィリスもブラビも実によく切れていた。興奮するとどうにも止まらなくなるブラビの切れ具合は本物。でもブラビが言うように、「果たして多数派が正常で、少数派が異常なのか?」 恐ろしい細菌兵器の存在を許してしまっている世の中こそが狂気なのでは? 黒澤明《生きものの記録》も同じ論調。

監督:テリー・ギリアム 《未来世紀ブラジル》
出演:ブルース・ウィリス、マデリーン・ストー、ブラッド・ピット
(1995・アメリカ)

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コメント

こちらにもコメントさせていただきます。

ふと思い出して「もう一度観たい」と思った映画がこの『12モンキーズ』でした。
コールが繰返し見る夢の中の倒れゆく男性、駆け寄って涙する女性の姿。未来の自分自身を幼い自分が見ていたという皮肉なラストは座布団一枚プレゼントしたいくらい、ピタっとハマっていましたね。

やっぱりもう一度観なくてはと思いました。(笑)

投稿: つっきー | 2005.07.09 05:24

つっきーさん、コメントありがとうございました!
私自身もラストに、ピタッとはまってしまいました。
今思い出しても、泣けてきます。

投稿: 電影道士 | 2005.07.10 01:28

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» 12モンキーズ [カフェビショップ]
12モンキーズ タイムスリップものなんだけどなかなかいい雰囲気を持っている映画だと思う。 テリー・ギリアム監督の「未来世紀ブラジル」とか他の作品は、ぎらぎらゲロゲロし過ぎていてあんま好きじゃない。 これは結構地味。 なんせ謎の細菌により生物の大多数は死滅..... [続きを読む]

受信: 2005.09.30 06:33

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