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ハルとナツ―届かなかった手紙

――引き裂かれた姉妹は「二つの日本」を象徴。平成版『おしん』あの感動よ再び。

まずは豪華な女優陣。
「女王の教室」の志田未来は、教育委員会の刺客・根岸季衣にいじめられ?家を飛び出して「ごくせん」仲間由紀恵に成長し、「トリック」の野際陽子へとつながる・・・
斉藤奈々は初めて名前を知ったが、確かどこかで見ているはず・・・今後要チェック!
「宮本武蔵」では、武蔵を愛した米倉涼子と小次郎を愛した仲間由紀恵・・・
そして「渡る世間は鬼ばかり」の森光子に、泉ピン子と野村昭子が友情出演。
男優陣もよかった。村田雄浩、斉藤洋介、井川比佐志そして柄本明・・・

これは橋田壽賀子の名作『おしん』の平成版である。
ハルが孫を連れて故郷に帰る導入部。
ぶらじる丸でのハルとナツが引き裂かれるシーンは、イカダの別れのシーンを思い出す。
ナツが辛い奉公先を出て、その後恩人とめぐり合い、そこで仕事を教わりながら事業を興し、成功して行く。しかしその事業もやがて曲がり角にさしかかり、息子と衝突してもう一度原点に戻ろうとする。
このように類似点が多いが、この作品を批判するつもりはない。後で述べよう。

さてブラジルに渡ったハルたちは、泥にまみれ、貧乏と戦いながら、自分たちの土地を耕してゆく。
そして日本人である誇りを忘れることなく、それを支えに生きてきた。
何をするにも家族が大事。農場を抜け出す時も、結婚する時もいつでもそうだ。ハル自身の結婚も父に反対されたが、ハルも息子の結婚相手がブラジル人であることに最初は反対した。(自分が受けた苦しみの仕返し?)家族の和を乱すことを嫌ったのだ。しかし最後は大家族に恵まれていく。

一方、日本に一人残されたナツは、家族から捨てられたという思いを持ちつつも、恩人から学んだ牛乳作りを軸に、やがて大きな会社へと育てていく。彼女は家族というシガラミ(あるいは日本人というアイデンティティ?)がないだけに、何でも実利的に行動できた。本家を飛び出したり、アメリカ人と一緒になろうとしたり、営業手腕のある男を夫としたり・・・とにかく生きていくために一番いい方法を選ぶしかなかったのだ。

しかし皮肉なことに、家族愛に恵まれなかったナツは、苦労して育てたはずの息子たちにすねをかじられ続け、結局会社も家庭も全てを捨てるはめになった。なんだか戦後日本の行き詰まりを象徴しているようだ。そんな中、突然姉ハルが訪ねて来ることで、ナツは今までの人生を清算し、今度はハルが息子たちを置き去りにして(自分が受けた苦しみの仕返し?)、70年前に行くはずだったブラジルに渡る決意をするのだった。

二人の姉妹はどちらも大変な苦労をし、大きな成果をつかみ取るのだが、生き方が実に対照的だ。ハルは戦前の日本人の生き方を、ナツは戦後の日本人の生き方を、典型的に表わしている。もしかしたら村田雄浩扮する忠治がナツの生き様を見たら、「この売国奴!」とか言って家の中に入れなかったかもしれない。それくらい生き方が違ってしまっている。

このまま見ると、戦後の日本が全否定されているようにも思えるが、決してそうではないだろう。
『おしん』から20年。日本はバブル崩壊を経て、繁栄の「豊かさ」と「むなしさ」を知っている。今こそもう一度『おしん』の精神に戻ろう、忘れてしまった日本人の誇りを取り戻そう。そういうメッセージなのだろう。それはそれで素直に受けようと思う。

ブラジル移民の方々のことは、こんなご苦労があったなんて、ほとんど何も知らなかった。
ブラジルに渡ったハルたちは、いわば日本の「分家」。ちょうどドラマの中の本家の人間みたいに、私たちは分家の人たちに冷たすぎたのかも。
海外から働きに来た外国人への差別ももちろんいけないことだ。
いろいろな事を考えさせられてしまう。

原作:橋田壽賀子 出演:上記参照
(2005年.NHK)

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