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ALWAYS 三丁目の夕日

――高度成長への限りない希望が信じられた30年代、故郷に帰ったような懐かしさと違和感を絶妙に閉じ込めた真空パックの三丁目。

まずは薬師丸ひろ子演じる肝っ玉母さんに拍手喝采! 鈴木モーターズ社長のお父さんを立てながら、しっかり一家を支えている。母親役があまりにもはまり過ぎて、あの往年の『野性の証明』『戦国自衛隊』の少女時代が遠い昔だった事に驚かされる。(失礼!)

そして茶川龍之介の吉岡秀隆。彼は何をやっても吉岡秀隆にしか見えないが、りっぱにインテリくずれ?の青年を演じていた。しかも子供を押し付けられて困り果てる様や、笑わせて泣かせる技は見事に昭和喜劇の王道を歩んでいる(笑いのネタが古くて、わかりやすいが、私は嫌いではない)。逝去10年になる渥美清がもしいたら、面白い絵になりそう。しかし満男もいい親父になったなぁ。(こりゃまた失礼!)

昭和の名子役に負けない演技を披露したのが、須賀健太と小清水一揮の二人。特に古行淳之介の須賀健太は、あの健気な目だけで喜びや悲しさの全てを表現しつくす。茶川を尊敬するまなざし、自分のアイデアが雑誌に載った喜び、後味の悪い母との出会い、クリスマス・プレゼント、そして茶川との別れ・・・その素朴で、素直で、純粋な感情表現に、たいていの大人たちは思わず涙。君は本当に平成生まれなのか?

こうした新旧名子役に加え、堤真一の達者な芸や、堀北真希のさわやかさ、三浦友和の渋さが加わり、妙に懐かしく、しかし実際はあまりよく覚えていない(あるいは全く知らない)はずの昭和30年代が不思議によみがえってくる。これが日本人のDNAに刻み込まれた下町の原風景なのか? そういえば寅さんとタコ社長もそうだが、下町ってお隣同士で喧嘩ばかりしているんだね。

原作の漫画は読みきりの短編で、まとまって読んだことがないが、映画の元ネタ部分を見ると登場キャラとエピソードを実にたくみに脚色しているのがわかる。原作に無いのが東京タワーと小雪演じるヒロミ。

33年限定の作りかけの東京タワーはウマイね。まだまだ伸びて行くあの時代の希望の象徴。36年にモスラが壊しているが、写真を見るとあの辺りは本当に高いビルは何も無かったようだ。するとモスラは鈴木モーターズや茶川商店などがある町並みを壊して行ったことになる?

ヒロミは何なのか? どこからともなく現れ、茶川との仲がうまく行きそうだったのに、またどこかへ消え去ってしまう。(もちろん売られていくのだが・・・)
「お姉さんは『訳アリ』だね。よかったら、話してみな。少しは気が楽になるかもしれないよ・・・」 寅さんがいたらきっとそう言うだろう。

しかし人生に疲れたヒロミがふらっと訪ねた柴又には、旅先で知り合った風来坊の寅さんはいない。やさしいオイちゃんオバちゃん、妹夫婦に囲まれた幸せな寅さんを垣間見て、自分の居場所を見つけられず、一人立ち去るヒロミ。そんなイメージ。

三丁目の世界に不思議な郷愁を感じながらも、そこに入りきれない自分を感じてしまう。隔絶された何かがあるからこそ、その向こうの真空パックされた30年代に新鮮さを感じるのかもしれない。彼女の孤独は現代にしか生きられない私の孤独なのさ。

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