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変身

――人には誰しも心を奪われる美しい瞬間もあれば、果てしなく絶望的な時間もある。しかし自分が自分である事にもっと感謝しなければ・・・

純一は絵を描くのが好きな一人の平凡な工員。毎週通う画材屋の店員恵にいつしか恋心を抱き始める。そんなある日思い切って恵を誘って美しい湖に出かけ、そこをバックに彼女の絵を描き始めるのだが・・・

東野圭吾同名原作のこのタイトルがなければ、間違いなく恋愛映画と思って見続けることだろう。もうとっくに忘れてしまったあの感覚を主人公に重ね合わせるのは少々辛いが、美しい大自然を背にした二人の語らいに思わず引き込まれてしまう。

画面は急転。深い眠りから目を覚ました純一は、白い壁に囲まれた無機質な部屋のベッドの上に横たわる自分を知る。この見事なコントラスト!一人の年老いた医師がやって来て、君は九死に一生を得たのだと語る。しかしいったい何が起きたのか純一は全く覚えておらず、教えてもくれなかった。

長い検査入院とリハビリを経て、頭の包帯が取れるとそこには生々しい傷跡が残っていた。水を飲みに病室を抜け出した純一がそこで見たものは・・・???!!
恋愛映画の余韻に浸っている私の脳には刺激の強いシーンだ。世界初の脳移植。一見成功したかに見えたが、純一の記憶の一部は甦らない。そして失われた何か・・・

退院してもあせりと苛立ちは続き、献身的に介抱する恵を純一は冷たく拒絶する。夜道を一人帰る恵の目には大粒の涙。大事件のショックに負けず、ひたすら純一の回復を信じて気丈にやって来た彼女には確かに辛いわな。それでもなおアパートに通い続ける恵。こちらまで泣けて来た。純一のあせりと苛立ちはまだまだ続き、その行動に次第に凶暴さが現れてきた・・・

脳の難病にかかった夫か妻を、もう一方が献身的に支えていく。脳に記された記憶こそがその人の人生。これは『私の頭の中の消しゴム』『博士の愛した数式』『明日の記憶』等の変化球だねぇ。
何の予備知識も無かったので楽しめた。でもサスペンスに感想は書きにくい。『白夜行』のようなタイトルは意味深でいいけれど、やっぱり『変身』というそのまんまのタイトルがじゃまだし、犯人途中でわかったし、あとはどう着地するかだけだし。これってダメ出し?

この作品のオリジナリティである「変身」の描写がいま一つ伝わってこない。イラついて恵を殴るシーンって、あれは『のだめカンタービレ 』の野田恵と重なってしまう。玉木宏自身がシリアス物もコメディ物もこなすので、かえって変身していく落差を感じなかった。小説は読んでいないが、きっと細かな心理描写があるのだろう。演技でそこまで描写するのは無理? そうそう『ザ・フライ』までビジュアルで行かないと変身した感じがしない。(これも同一テーマ)

北村和夫演じる老医師は、真摯に患者を助ける熟練医師でありながら、最後は研究のためには人を人とは思わない老獪なマッドサイエンティストの一面も見せる。最初は人格者に見えた彼が実は一番怖い。

原作:東野圭吾
監督:佐野智樹
出演:玉木宏,蒼井優,釈由美子,北村和夫
(2005年、日本)

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