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時をかける少女(アニメ版)

――時をころがるお転婆少女・真琴の七転び八起きのやり直し人生。私は原作やNHK版や大林監督版よりも結構楽しめたけど。

筒井康隆原作は短編ながらも未だに色あせないSFファンタジーの金字塔だろう。
『スーパージェッター』のような未来人でもなく、『タイムトンネル』のような超最新鋭の研究所でもなく、ごくごく普通の女の子芳山和子が、ごくごく普通の放課後の理科室で、という所が子供心をくすぐった。ケン・ソゴルという名前もしっかり頭に刻み込まれた。ラベンダーという花は当時見たこともなかったが、いつかきっと嗅いでみてタイムトラベラーになりたいと願ったものだ。(今ではトイレに満ち溢れているその香り)

しかし、淡い恋心をモチーフにしたノスタルジー…云々という何かで読んだ解釈は、あまり当たっていないと思った。NHK少年少女ドラマシリーズ('72)では当時の幼い自分にわかるはずもないし、現存する最終話を見ても、どこが淡いのかあまりピンと来なかった。大林版('83)は原田知世の笑顔全開だが、淡い恋心よりはどうしても尾道のような原風景への淡い郷愁が先に立ってしまう。ミュージカル風エンディングは好きなのだが。

第一に思い出として残るからこそ「淡い」と感じるのであって、『MIB』のようにピカっと記憶を消されてしまったら、「淡く」さえもない。何も思い出せない芳山和子をあわれと思うか、それとも好きな彼女を忘れられずに未来に帰ったケン・ソゴルをあわれと思うかは自由だ!(♪あわれ is freedom~)でも、この見方はちょっと『シザーハンズ』の感想に似てるで! 私は角川春樹監督版('97)の、一味違うウェットなエンディングが好きだ。

もう一つ残念なのは、今までの作品では思った通りの時間に行けるほど能力はそんなに高くなく、あまり見せ場らしい見せ場が無かったこと。それにNHK版では和子が先生を助けようとしたが結局できなかった。過去は変えられないという例のお約束で。大林版の場合も原田知世は自分の能力に気付いたらすぐケン・ソゴルが現れてしまう。もっと自由にあちこち行かせてあげればよかったのに。

さてここまで書けば、アニメ版が結構楽しめた理由が何となくお分かりであろう。淡い三角関係、放課後の理科室という設定はそのままで、あとは大胆にアレンジをしている。
せっかく身についた超能力だから、好き放題に使いたい。過去は変えられない、なんて難しい時間の理論は関係ない。真琴は何度でも過去に戻って、自分の好きなように人生を選択している。宿題を忘れたら過去に戻ればいいじゃん、なんて実に安直。調子に乗って功介と後輩の女の子の仲を取り持つために、何度も過去を上書き保存する。でも高校生が思いつくことって、しょせんあんなもんでしょう。100万円もらっても、何に使えばいいかなんて急に思いつかない。

なのに千昭に告白(あれでも一応告白なのかな?)された時は、それをこばんでさっさと過去を消してしまう。しかし一度消えた過去は元に戻らない。彼の気持ちを踏みにじった罪悪感。そして好きだと言われて初めて気付く自分の中の揺れる想い。いいねえ、これこそが「淡い恋心」。このビミョウな乙女心がうまく表現できていたと思う。最後も記憶を消されず、「淡い」思い出を抱いたままがんばろうと誓う彼女の姿に「負けないで!」とつい応援したくなる。これまでの作品にない展開に、なあるほど、そう来たか!と感心させられた。

※「7デイズ」というアメリカのSFドラマでは、主人公の特殊工作員が過去に戻って社会を脅かす大事件を未然に防ぐ。これなんかはもっと大規模で、国家機関が関与して過去を変えるのだが、やはり個々人の人生は上書きされてしまうのだ。これって人権侵害だろう?
※タイムリープできる回数だが、あれはおかしくないか? 戻って増えるくらいなら、最初からそうなっているはず。エンディングが流れていても、気になって仕方なかった。
※中高校生くらいだど、変えたい過去なんてそんなにないだろう。おじさんになると変えたい過去だらけだ。でももう一度中学生に戻って受験勉強なんかやり直したくないしナ。
◆この電影道士のブログには、時間と記憶関係の映画の記事が結構多いのに気づかれたであろうか? 『戦国自衛隊』『タイムマシン』『12モンキーズ』『猿の惑星』『メメント』『MIB』等。
原点はこの『時をかける少女』だろう。

監督: 細田守
原作: 筒井康隆 『時をかける少女』
脚本: 奥寺佐渡子
声の出演: 仲里依紗、石田卓也、板倉光隆、原沙知絵
(2006年.角川映画)

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